六甲山を源流とする逆瀬川が武庫川に合流する付近、閑静な住宅地に建つ9住戸の分譲住宅である。9区画は主に2つのエリアに分けられる。逆瀬川に面する北側4住戸は、大きなサッシ越しに逆瀬川が借景となる2階リビングの住戸や、デッキテラスのある住戸で構成される。引込道路に面する南側5住戸は、人通りのない静かな環境を楽しめるよう、離れのある住戸などバリエーションに富んだ住戸計画を試みている。分譲地全体の形状から導き出された変化に富んだ敷地形状は、それがそのまま特徴ある住戸計画となるようなインテリアとした。そうやって実現したバリエーション豊富な住戸計画は、多様化する現代のライフスタイルにも一致している。外壁は明るい色のシンプルなサイディングとし、そこには四季を感じる植栽の樹影が映り込み、自然を身近に感じられるようにした。引込道路の路盤はアスファルトにせず、表情に富んだ石張とすることで、そこも我が家の庭となるよう見立て、敷地内外が一体となる計画とした。緩やかな勾配の屋根が織り重なりは、逆瀬川の水面や川を抜ける清風をも連想し、周辺環境と調和した住宅地が完成した。この計画は、2年後には創業30年を迎える株式会社ウィルが、創業の地に原点回帰として位置付けたこれからの宝塚を象徴する分譲住宅である。